黒沼ユリ子の
♪メキシコ音楽事情 O


(前号からの続き)

カデミアは今から26年まえに、その当時はまだメキシコのどこにも存在しなかった、幼い子供のうちから始められるヴァイオリンの専門学校としてスタートしました。

「ヴァイオリンという楽器はとても難しく、幼い子供の頃から勉強を始めないとマスターするのはとても無理」そして「きちんとした基礎を小学生のうちに身につけてしまえば、あとはプロになっても、アマチュアとして過ごしても一生、音楽を最高の伴侶として人生をより豊かに生きられるようになります」と主張して来たのです。

その後、ヴィオラとチェロも教えるようになったのですが、四半世紀後の今、プロになったヴァイロニストがすでに6人も古巣のアカデミアに教師として戻って来たり、在校生たちの弦楽合奏に加われるなら、と喜んで楽器をかかえて馳せ参じる弁護士とか電子工学のエンジニアなど、アマチュア・ヴァイオリニストたちも立派に誕生するようになりました。

しかしながら、99年の開校許可を持つこのアカデミアの定款にはどこにも「生徒は子供でなくてはならない」とは書かれていないことに気がついたのです。今日では、小学生でも入れる公立や私立の音楽学校が、ここメキシコでもめずらしくなくなりましたが、でも、音大生ではなく「音楽大好きオトナ」が入れる音楽学校は、どこを見渡してもなさそうなのです。彼らは一体、どこへ行ったら若い頃からの夢を実現できるのでしょう。

音楽を演奏する歓びの中の最大のものは、自分自身がメロディーやハーモニーやリズムの中に浸りきることにあります。しかしそれは、ある楽器をたった独りで演奏するよりも、より大勢で合奏をすることによって、より複雑な音の響きをカラダ全体で受け止めることができるようになるのです。ですから、個人レッスンを受けてテクニックを磨くのは、いつか合奏に参加できるようになるためであり、特に弦楽器の場合は、弦楽合奏団という器の中に自分をスッポリと埋めて、みんなで音楽を創ってゆく工程を内側から体験できるということが、もうひとつの醍醐味でもあるのです。そのためには合奏団が必要で、個人的に先生についてレッスンをしているだけでは、よくて二重奏とか三重奏しか望めません。ですから学校のように、いろいろなレベルの生徒が集まっているところでは、合奏団の選曲も、さまざまなレベルの作品が選ばれて演奏されるわけで、大人のためにも学校があるべきですのに、今のところメキシコには右を見ても左を見ても皆無のようなのです。
そこでひとつ最新ニュースをお届けいたします。



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「時代遅れもはなはだしい」と笑われるかもしれませんが、やっとアカデミア・ユリコ・クロヌマのホームページが立ち上がりました。アドレスはhttp://www.ayk.com.mxです。ぜひご覧になって下さい。今のところスペイン語と英語版のみですが、いずれは日本語のページも足したいと考えております。教師たちの略歴やアカデミアの26年間の主な足跡などがカラー写真とビデオも少し入って紹介されていますが、最後のブログのページをクリックしてみて下さい。こう書いてあります。

「アカデミア・ユリコ・クロヌマの扉が、大人の音楽愛好家たちのためにも開かれることになりました。弦楽器を弾けるようになりたいという夢が実現できます!」と。そして「幸いにもアカデミアには様ざまなレベルの生徒達がいるので<大人の生徒>たちもいろいろなレベルの合奏に加わることが可能です。公開演奏会の機会も沢山あります。音楽には常に平和と友好がついています。メキシコ人でも外国人でも音楽愛好家の方がたなら、どなたでもアカデミア・ユリコ・クロヌマへ歓迎いたします!」と。




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少々宣伝のようになってしまいそうで恐縮ですが、実はみなさんの中にも「折角メキシコに住みに来たのだから、何か日本では出来ない経験をしたり、特別な思い出を作りたい」と内心お考えの方もあるのではないでしょうか。もしも、あなたが何か弦楽器を弾けるようになりたい、と本当にお望みでしたら次の質問にお答え下さい。
@ 何か楽器を以前から弾かれていましたか?

Yesの方へ:ヴァイオリンを習われたことがあるなら、ヴァイオリンをここでお続けください。他の楽器を弾かれていた方にはヴィオラまたはチェロをお薦めします。この方がずっと早く合奏団に参加できるようになるからです。

Noの方へ:問題ありません。もしも、あなたが本当にお望みなら、決して「始めるには遅すぎる日」はないのです。ヴィオラかチェロをお始め下さい。

A 楽譜は読めますか?

Yes の方へ:素晴らしいです。 
Noの方へ:ノー・プロブレム。簡単に覚えられます。

B 楽器はお持ちですか?
Yes の方へ:すぐに始められますね。
No の方へ: 大丈夫です。レンタルもありますから。(数に限りはありますが・・・)

C 毎週一回は、アカデミアにレッスンに通えますか?
Yes の方へ:ブラボー、素晴らしいです!
No の方へ:せめて2週間に一度は通えるといいですね。




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「スポーツの何かか、どれでも何か楽器の演奏ができると、海外に出たときに簡単に友人が作れるもの」とは、よく耳にする言葉ですが、もしも、あなたがクラシック音楽愛好家なのでしたら、合奏団に加われたことによって、この地で普段は馴染みのない世界の、予想外な友人にめぐりあったりすることが可能になります。そして、アカデミアの子供たちと共に、日本でしたらさしずめ「サントリー・ホール」とか「東京文化会館」にあたるような「サラ・ネサワルコヨトル」とか「アウディトリオ・ブラス・ガリンド」のような一流の演奏家たちと同じステージでのコンサートに出られたりします。チケットを買って客席からステージを見るのではなく、楽屋に入ったり、広いステージから客席を臨みながら演奏するという、楽器を弾けるからこその得がたい体験をしたり、楽しい思い出ができるわけです。

すでに日本には沢山の、大人のためのカルチャー・センターとか成人学級とかがありますが、ここメキシコではまだ、若い人の教育や就職の世話をするのに精一杯の国情ですので、成人教育や第三世代のための文化的生活のために手を差し伸べるだけの余裕が、公的機関にはないようです。そこで私たちは、「もしも音楽が好きならば」という条件つきではありますが、せめてその範囲内の社会問題に少しでも貢献できれば、と前述のような新方針が理事会で決定したというわけなのです。

26年前、アカデミア・ユリコ・クロヌマがスタートした時には、まだこの国では誰も考えていなかった「幼児音楽教育」を開始し、今ではそれが当たり前のようになったように、今「成人音楽教育」をアカデミアで始めることが、他校へも飛び火して、いつの日かにはめずらしくなくなるよう希いつつ、同時にまたこれも「日本とメキシコの友好の絆を強める一助になれば」と期待しております。メキシコ人、日本人、外国人を問わず、もし音楽愛好家のご友人がおありでしたら、アカデミアのホームページを開かれるようお薦めくださいましたら幸いです。そしてあなたも、もし日本では持てなかった貴重な財産である「暇」を、ここメキシコで手に入れることが可能になっておいでなら、どうぞ躊躇などせずに、ご連絡ください。きっと何年後かに「コレは一生に一度の経験だったわ」と、ビデオや写真をながめながらメキシコ滞在を懐かしく思い出される証拠のひとつになるでしょう。

「黒沼ユリ子のメキシコ音楽事情」は、先生がご多忙のため
しばらくの間、休載とさせていただきます。
黒沼先生、長期にわたっての寄稿、ありがとうございました。


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