質の高いメキシコ民芸品に触れる
MUSEO ARTE POPULAR−民芸博物館−
M USEO ARTE POPULAR(MAP)は、メキシコの民芸品の普及と販売促進をはかる理念で2006年2月28日、開設されました。運営母体は「MAP友の会」で、個人と法人の寄付を基金に、連邦政府とメキシコ市の協力を得て開設され、運営されています。
博物館の建物の歴史はスペイン統治時代の1768年に遡り、貧しい人々のための貧救院、孤児の学校として始まり、数々の変遷を経て1980年から1985年まで海軍省のオフィスでした。85年の地震の被害で暫く使われていませんでしたが、その後「友の会」の手による修復が成って、民芸博物館として再生しました。
展示の様子を各階ごとに紹介しましょう。内部はパティオ、1階〜3階の展示室からなり、主要な民芸品は2階と3階に展示されています。
まず3階には、日常生活で使う民芸品(Vida Cotidiana)や“Grandes Maestros”の作品が主に紹介されています。Grandes Maestrosとは日本でいう人間国宝で、高い技術を持つ職人の方々の工芸作品が、2階とあわせて展示されています。日常品コーナーでは、Puebla、Tonalá、Tlaquepaqueなどの産地の陶器、Gualupita村などの織物、Orinará村の漆器、またNahua、Mixteco、Zapoteca、Otomi族などの民族衣装(晴れ着)、宝飾品、銀細工、さらにはSan Felipe村などの刺繍など、多種多様な作品を見ることができます。高い技術と品質に裏打ちされた、美しい色彩の作品が並んでいます。例えばGualupita村の外套の織物は製作に2ヶ月を要したそうで、いずれも職人の方々の精魂込めた作品であることが感じられます。
2階は宗教的なものの展示が主で、聖物(Lo Sagrado)や空想の世界(Lo Fantástico)などに分類されています。ここでは伝統的な民芸品から、人びとの世界観や宗教観が伝わってきます。Huichol族のビーズ作品や色糸貼絵、死者の人形、仮面、悪魔、動物、そして「生命の樹」など、数々の作品を通して、メキシコの人々の自由闊達な精神、豊かな感受性と想像力を感じることができます。
生命の樹はメキシコの様々な地域で作られ、粘土や陶器に多彩な色づけがされています。中心の樹は林檎の木で、カトリック信仰による人の生命の起源が表現されています。そうです、アダムとイブのエデンの園のエピソードが語られているのです。しかし、カトリックの伝来前から、メキシコの多くの村には人の生命と結びついた大木への信仰がありました。とくにマヤの世界では、十字紋章の生命の木が、トウモロコシとともに、雨と豊穣のシンボルでした。そしてCeibaという女神が生命の母として信仰されていました。生命の樹には、カトリックの信仰とともにマヤの精神世界の影響があり、それらが混じり合っています。
展示品はいろいろな要素が混じり合い融合していて素朴ですが、これらの民芸品は美しい色調と楽しい装飾で私たち見る者を魅了します。それは他の民芸品にもいえることです。例えばGualupita村の織物の図柄も、スペイン人の渡来前のものやそれ以降のものなどいろいろ混じりあっていると、製作者のエフレンさんは説明してくださいました。
今紹介したものの他にも、アマテ、木彫り、土偶、ガラス細工、竹細工や藁細工、紙細工など、各地方のたくさんの民芸品が展示されていて、あらためてメキシコが民芸品の宝庫であることを実感します。
1階には工芸教室、資料室、特別展示室があります。また、パティオには高さが2メートル以上もある大きな生命の樹があり、私たちを出迎えてくれます。ミュージアムショップは品揃えが豊富で、メキシコ各地の良質の民芸品を揃えています。それだけにお値段も高めですが、クレジットカードが使用できます。カフェもモダンな雰囲気です。
民芸博物館の知名度はまだ低いようで、平日も週末もゆっくりと見学できます。ご家族や友人と出かけるのも楽しいでしょう。また、日本からいらした方を案内しても、きっと喜ばれることでしょう。
|
|
(H.K T.O)
| 日墨倶楽部へ | 今月のトップへ | このセクションンのトップへ |